大豆イソフラボンで更年期対策~効果はある?
アメリカの女性の乳がん発生率は、日本人のおよそ4倍です。
欧米人に比べ、日本の更年期女性のダメージが比較的少ない理由のひとつとしてよく挙がるのが、日本人がふだん味噌・納豆・豆腐・おから・豆乳などの食事を通して採っているフラボノイドの一種「大豆イソフラボン」です。
大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンと分子構造がよく似ているため、「植物性エストロゲン」とも呼ばれています。
体内のエストロゲンが不足している更年期に、大豆イソフラボンは「エストロゲン様作用」を発揮してくれます。
また同時に「抗エストロゲン作用」も有するため、体内のエストロゲンが過剰なときはこちらの作用が前に出て、身体のホルモンバランスを整えてくれます。
「イソフラボンを一日どれくらい摂取したら、効果が期待できるのか」については、現状でまだ確定されていません。
一般的には一日あたり40~50mgと言われており、納豆一パック(イソフラボンの含有量70mg)・豆腐1/2丁(同75mg)・豆乳コップ1杯(同50mg)程度ですから、通常の食事からこれらを摂れば、十分にまかなえることになります。
国民栄養調査によれば、平均的日本人の大豆イソフラボン摂取量は18mg/日です。ちなみに摂取の目標値は食品安全委員会で約70~75mg/日、厚生労働省で約100g/日となっています。
ただしイソフラボンは、体内に入った後の吸収量が40~60%程度にとどまります。摂取度合いについてもかなり個人差があり、ほとんど腸から吸収されず汗や尿で排出されてしまう人も少なくありません。
そもそも大豆イソフラボンは、人の健康を維持するための必須栄養素にも分類されていません。
大豆イソフラボンの更年期障害に対する効能については現段階で賛否が別れており、いまだ研究途上なのが実情です。
サプリメントなどを併用して、摂取量が過剰になった場合のマイナス面を警告する声もあります。
大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A(内閣府 食品安全委員会)
大豆イソフラボンの多くの機能はイソフラボン本体ではなく、その代謝物である「エクオール」が担っていることが判明しています。
エクオールを体内で産生する力(エクオール産生)は個人差が強いとされ、また人種によっても異なるそうです。
日本を含むアジア人のエクオール産生は50%台なのに対し、ヨーロッパ・アメリカ系の人は30%前後ですが、これは大豆の食習慣による違いと見られています。
このように同じ日本人でも、人によってエクオール産生は異なるわけですが、これは尿検査で簡単にわかるので、気になる方は婦人科に照会のうえ検査してみるとよいでしょう(健康保険は適用外です。自己検査キットもあります)。
エクオールに関する研究(株式会社ヘルスケアシステムズ)
体内でエクオール産生が行える人限定の話になりますが、大豆イソフラボンの摂取によって更年期障害が軽減されることは、これまでの調査研究によっても確かめられています。
一方で生まれ持った体質としてこのエクオール産生能力が無い・あるいは著しく低い人は、大豆イソフラボンの効果をあまり期待できないことから、イソフラボン摂取は少なくとも、万人向けの更年期障害対策とは言えないようです。
ただし現在、エクオール産生を外部から促す物質を特定するための研究が世界的に進められており、遠からず効果的な治療法が見つかるかもしれません。
エクオール産生を上げる効能をうたうサプリメントもいくつか出回っていますが、薬ではないので過度な期待は控えましょう。
昨今、日本人の若い世代のエクオール産生の低下が指摘されていますが、日々の食事で大豆製品を摂らなくなってきている点が、一つの理由とも言われています。
他にも大豆イソフラボンには、LDLコレステロール値の低下・HDLコレステロール値の増加・血管の収縮を防ぐ作用・血圧の低下作用・乳がん予防・骨粗鬆症予防(骨密度改善)など、数多くのすぐれた効能が指摘されています。
質の良いタンパク質やカルシウムも含まれており、更年期対策を兼ねた生活習慣病対策として、いずれにせよ日々の食生活に積極的に取り入れたい食品であることは確かです。
更年期対策を意識するなら、血液中のイソフラボン濃度は摂取後約2~6時間でピークを迎えるので、そのサイクルに沿って一日3食それぞれのメニューに大豆食品を一品取り入れることを心がけるとよいでしょう。
ひとつ前の記事は「更年期の食事~「摂取のバランス」が肝要」です。
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